今日は寒いからね・・・
- 2011/05/09
- 20:00

友人の家に泊まりで遊びに行く予定であった。
期末試験を終えたばかりの3人はその開放感と春の風を気持ちよく感じながら、駅のホームでバカ話をし列車の到着を待った。
その時、お揃いのジャケットを着込んだ大柄な男性の一団がホームに現れた。
なんと「読売巨人軍」のご一行様であった。
当日は地元の市営球場でオープン戦が行われ、その後名古屋へ移動するためであった。
そしてその中には野球少年であったじょん少年の憧れ「MrG」の姿も・・。
そう、現役を引退したミスターの監督一年目でもあったのだ。
幼い頃から大好きだった巨人軍とミスターが目の前にいる!
そうだ!サインを貰おう!!
3人は大急ぎで駅ビルへ走り、色紙とサインペンを買ってきた。
幸いなことに平日の午後ということもあり、人影はまばらであった。
3人はホームに立つミスターの正面に立ち、色紙とサインペンを差し出すと「サインして下さい、お願いします!!」と頭を下げた。
するとミスターは無言で反対方向へ歩き出した。
3人は反対側へ回り再び「サインして下さい、お願いします!!」
またミスターはクルリと向きを変え反対側へ歩き出す・・・。
三度3人は「サインして下さい、お願いします!!」
すっと立ち止まったミスター。
3人はやっとこれでサインが貰えるのか、とドキドキしながら手を差し出す。
「今日は寒いからね・・・・」
呆然と立ち尽くす3人の横に名古屋行きの列車が止まる。
そしてミスターは列車に乗り込んで行った。
その時差し出したままの色紙を見つけて、ミスターの後ろから現れた新加入の外国人選手ジョンソンが「オー、サインネ!OK!!OK!!!」と言いながら1枚にサインを書いた。
頼んでもいないジョンソンのサインと、真っ白な色紙2枚を手に、3人は列車を見送った。
その夜3人は幼いころから憧れたヒーローのあまりに冷たい態度に、今後の人生はアンチGを貫くことを誓いジョンソンの色紙を叩き付けたのであった。
3人の怨念か、その年、ミスター率いるG軍は球団創設以来初の「最下位」に沈んだ。
そして現在もそれぞれが「中日・ヤクルト・広島」に別れG軍が「永久に仏滅」であれ!!
と、祈るのであった。